プレゼン研究室

「プレゼン力の伸ばし方」:話す

「話す」
1「アイ・コンタクトを身につける法」
 「人前で話すときには、その場にいる人たちと視線を合わせるアイ・コンタクトを心がけましょう」話し方などの本には、かならず「アイ・コンタクト」のことが書かれています。話しながら、「そう思いませんか?ね、そうでしょう!」と目と目で会話ができれば、説得力がアップするのは目に見えている。でも、ちょっと待ってほしい。頭でわかっていても、じっさいにはなかなかできないのが「アイ・コンタクト」なのだ。

 それもそのはず、日本人には人の目を見て喋るなどという習慣がなかったんですね。時代劇で見るように、エライ人の前に出たら畳に額を擦りつける。「面(おもて)をあげい!」と声がかかって初めて顔をあげる。それとて、上位者の顔をまともに見ることは許されない。上位者が下位の者の顔を見るためにあげさせたのだ。

それほど身分の差がない間柄でも、まともに視線を交わすのは失礼なことである、という社会通念のなかで日本人は生活してきたわけです。ですから人前で喋ると、どうしても視線がまぶしい。まったく平気だと言う人もいますが、それは例外。日本人なんだから、他人の視線がまぶしいのは当たり前だと考えたほうがいい。だって、視線を合わせないように社会的に訓練されてきたんですから。日本人は視線を合わせないで話す高度なテクニックをマスターしていると言ってもいいくらいです。
 
 日本人がアメリカ人のようにアイ・コンタクトしながら話す必要はないと、私は思っています。じっさい、アメリカ人のよう相手に執拗に視線を送りながら話す日本人も増えてきました。でも、そこにはある種の「押し付けがましさ」や「自信たっぷり」といったようすが見て取れて、相手に警戒感を抱かせてしまうこともあります。では、アイコンタクトは不要かと言えば、そんなことはありません。ビジネスは「グローバル化」してアイ・コンタクトしながらの交渉が当たり前になった。一般の人の意識もしだいに変わってきました。目をそらせながら話をすると、言い分に自信がないのかと思われてしまう。日本人どうしの場合は、「押し付けがましさ」や「わずらわしさ」を感じさせないていどの(つまりアメリカ人よりも抑えたソフトな)アイコンタクトに、相手を動かすツボがあるように思っています。

 相手に1、2秒視線を送る。3秒以上になると相手はわずらわしく感じます。わずらわしくないのは恋人どうしの場合だけです。恋人でもない相手にそうしたアイ・コンタクトをするのは、「色目を遣う」というヤツです。

 私は人一倍、他人の視線をまぶしく感じる性格です。そんな私が試みたアイコンタクトの訓練法を紹介しましょう。視線に対する免疫を作って、視線を浴びる緊張に鈍感になる方法です。

 スピーチクラブに参加して、会員たちの前で準備したスピーチをしなくてはいけなくなりました。会場の出席者たちに視線を送りながら話ができるようになるにはどうすればいいか。私にあるアイデアが浮かびました。書斎にあった古新聞をめくると、星野仙一さんの載った新聞広告がありました。白いシャツで微笑んでいるものの、「燃える男」の怒ったら怖そうな雰囲気は健在でした。

 バスト・ショットの写真を実物大に拡大コピーして、ダンボール箱にピンで留めた。シャツよりもスーツのほうが緊張感が出るかなと、筆ペンでスーツを描いたのも混ぜた。ダンボール箱6個をずらりと並べて、6人の星野さんの前でスピーチの練習をしました。「キイ・マンの星野さんも、そう思うでしょう!」話のポイントでしっかりと視線を送りながら、こころのなかで呼びかけます。1、2秒で視線をはずして、別の星野さんに移す。
 私の場合はたまたま星野さんだったわけですが、もっと怖そうな人がいいかもしれない。かつては威圧感のある政治家が大勢いましたが、最近ではなかなかそういう面構えが少なくなった。そうした中でお勧めは、鳩山兄弟の弟さんのほうの鳩山邦夫さん、都知事の石原慎太郎さん。読売の総帥・渡辺恒雄(ナベツネ)さんも適任でしょう。インターネットで探してプリントアウトすれば、顔写真がかんたんに手に入ります。そうした人たちを取り混ぜて、ずらっと並んでいただいて、その前でスピーチやプレゼンのリハーサルをする。なんと豪華な聴衆でしょう。

 この練習をして本番に臨めば、じっさいのプレゼンはずっと楽になるはずです。どんな顔ぶれが会議に出席するにしろ、鳩山さんや石原さんほどの威圧感はないでしょうから。
 女性では、事業仕分けで役人を震え上がらせた参議院議員の蓮舫さんもお勧めです。「この企画を採用することが御社に大きな利益をもたらすと信じています、蓮舫さん!これから企画の内容をご説明いたします……」プレゼンの練習相手として打ってつけです。

 アイ・コンタクトの訓練法をもうひとつ。電車の座席に座れたときには、反対側の席に座った人を一人ずつ、順にアイ・コンタクトしていきましょう。そのさいは、ガンをつけていると思われないよう、くれぐれも微笑みは絶やさないように。



Comments are closed.

page top
カレンダー
2018年5月
« 4月    
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031  
検索
最近の投稿
アーカイブ
カテゴリー
最近のコメント
copyright(c) hayashi yasuhiko.com
contact