プレゼン研究室

第二章 CM業界A面、B面                          9)「ホンネ収録、マル秘テープ入手」

9)「ホンネ収録、マル秘テープ入手」 映像新聞編集部のNさんへ

 不景気といえど、師走に入ると何かと気ぜわしく、ついうっかりが多くなりがち。先日、音楽の打ち合わせにウォークマンを持って行き、置き忘れてしまいました。翌日返ってきたのですが、カセットに入っていたはずの音楽が途中から消えて、人の話し声に変わっていました。どうやら、だれかが間違って録音ボタンを押してしまったようです。録音状態が悪く、途中で途切れたり、またノイズが入ったりしています。会話の主は二人で、内容から察するにCMプロデューサーと演出家と思われます。以下録音テープの内容です。(P)はプロデューサー、(D)は演出家と推定される人物です。

(D)信用しているプロデューサーのあんたの紹介だからと思ったのに、ちょっとひどいよ。代理店のあんなのに引き合わせるんだものな。
(P)すまん。この埋め合わせはどこかでするからさ。
(D)人が悪い、アタマ悪い、カネはないの三拍子そろってるんじや、俺だって立つ瀬ないぜ。あんな、編集のタイトル入れる段になって、別のカット使いたいとか言い出   すの、いちばん困るんだよ。
(P)口を出すタイミングって、たしかにある。あそこで言われたら徹夜の編集作業は何だったのってことになるし、カネだって全くムダになるわけだし。どこで何を決め   なきやいけないかという、CMの作業行程の基本くらいは最低勉強しておいてほし   いな。
(D)議論するのヤだから、代理店の言うとおり一応やって見せてあげる方針なんだ。そうすりゃ、良いか悪いかわかるじゃない。ま、わかんないのもたまにはいるけど。だ  けどさ、ハリー(※編集機の名前)なんかの作業になってくると、やって見せるだけ  で百万単位でカネが出ていくし、時間もかかるしで、それもできにくくなってるんだ  よな。
(P)事前の打ち合わせはトコトンやっとかなきやダメだと思うし、今回、やったつもりだったんだけどな。
(D)オしさ、CMプランナーはキャッチャーだと思うわけ。ここに投げろってキチッとミットを構えてくれないと困る。それをしないで、球の握りはこうとか、足のあげ方  はどうとかの指示ばっかりするから、ピッチャーのオレが混乱するんだよ。
(P)こっちもプロで、それでメシを食ってるわけだからな。
(D)そう、オレの勝負球を知ってて起用したのなら、「ここに投げろ」をキチンと示してはしいんだな。投球フォームを修正するくらいなら、起用しなきやいいんだ。そう  いう連中にかぎって、うまくいきゃ自分の手柄にするし、悪けりやこっちのせいだも  のな。
(P)ま、今回だけは、やってよ。彼もあんたのこと気に入ってるし。これからは指名がきても、海外ロケでスケジュールが合わないってことにするからさ。
(D)たのむよ……。

(そうか。いつもスケジュールが合わない演出家がいるけど、嫌われてるんだ、やっぱり)

(D)プランナーでも、キチンと「クリエイティブとしてどうだ」と言える人は少ないね。クライアントがどう言ってる、こう言ってるばかりで、それじゃ、クリエイティブ  のあなたはどう言ってるんですかって聞きたくなる。
(P)だから、クライアントに突っ込まれると、すぐ演出家にふる……。
(D)一緒に打ち合わせして、納得したはずなのに、こっちにふるのはおかしいよね。あと困るのは、「個人的には面白いと思うんだけど」つていうの。べつに個人的にプラ  ンナーと付き合ってるわけじゃないからさ。オレにはそっちの趣味ないし、個人的に  どう思うかなんて言われても何にもならないわけでさ……。

(ノイズ多く、しばらく聞き取れず。その間に話題の主が変わったようす)

(P)院政を布(し)く人って参るな。お疲れサマしてさ、ホツとしてると、翌日電話かかってきて、上がこう言ってるから直してほしいっていうケース。
(D)あれはない。ないよね。
(P)ルール違反だよ。現場判断がますます重要になってきているし、いない人の思惑で動くわけにいかなくなってきてる。それがたび重なると、オレたちは現場に立ち会っ  てる担当者を信用できなくなる。このあいだ、担当の彼に、上の××(ノイズで聞こ  えず)さん何ておっしやってますかって、しつこく聞いてたら、カチンときたらしく  て、彼、椅子けっとばして帰っちゃった。オレもいけなかったけど、その確認しない  と仕事が前に進めなくてさ。
(D)ま、現場に立ち会わずに、ああだ、こうだ言うのはズルイってことは言えるね……
(またまた、しばらく聞き取れず)

(D)××さんて、ウルサ型だと思われてるけど、オいは案外御しやすい。「ここで妥協すると、すべてが壊れますよ」てなことを言うと、がんばってくれることが多いな。  彼って自分のことインテリだと思ってるから正論で押すに限る。
(P)それは言える×××××。

 録音テープはここで終わりました。初めのうちは、てっきり小生のことだと思ったのですが、どうやら他の人のことも入っているようです。反論したい部分もあるし、また、思い当たる部分もあるしです。

 Nさん、いずれにしてもこのテープ、いろいろと差し障りがあるので、お聞きになったら速やかに小生のもとに返却してください。くれぐれも活字にはしないように。



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